片桐智のタロット占い

大アルカナ6番目のカードは"The Lovers"です。直訳して「恋人たち」という日本語のタイトルもありますが、一般的には「恋人」と呼ばれることの多いカードだと思います。占い師が受ける相談の多くは恋の悩み。占い中に「恋人」などというカードが出たりすれば、つい期待がふくらんでしまうことでしょう。

ここで使用しているウェイト版のデッキでは、恋人のカードは明らかにエデンの園に立つアダムとイブがモチーフになっています。空には大きな太陽が輝き、両手を広げた天使が2人を祝福しているかに見えます。アダムの背後にあるのは生命の樹、イブの背後にあるのは智恵の樹といわれています。智恵の樹に1匹の蛇が絡み付いているのが見えますね。

神様は2人に、智恵の樹の実は絶対に食べてはならないと言います。しかし、蛇に姿を変えた悪魔(堕天使ルシファー)は智恵の樹の上からイブを誘惑します。イブは誘惑に負けて樹の実を食べてしまい、アダムはイブとともに罪を背負うために、自分も樹の実を食べます。これが人類最初の罪、原罪と呼ばれるものです。この罪により、2人は楽園追放という罰を受けます。いわゆる、失楽園です。

伝統的なマルセイユ系のデッキなどでは、男性1人に女性2人が描かれているカードもあります。どろどろした三角関係を連想してしまいますが、このような構図になると、複数形の「恋人たち」というタイトルの方がふさわしくなるでしょうね。男性が2人の女性の間で揺れるということから、人生の分かれ道を象徴するカードとされることもあります。

いずれにしても、ここで注目すべき点は、これまで1枚のカードに登場する人物は、基本的には1人だったのが、2人(または3人)に増えたというところです。一人の人間が他人と出会うことで新しい世界が生まれます。お互いの間にルールが必要となり、社会が形成されます。このカードは、社会性を象徴するカードともいえます。軍隊などでも、兵士が2人以上いれば「部隊」と呼ばれ、身勝手な単独行動は許されなくなります。生死をかけた戦争の中では、個人の身勝手な行動が、まさに命取りとなりかねません。人と人が出会うということは、それほど重大なことなのです。神の与えたルールをイブが破り、アダムをも巻き込んで楽園追放という罰を受けるというのは、とてもわかりやすい教訓だと思います。軍隊でいうところの、連帯責任ですね。

占いの中では「運命的な出会い」などと解釈されることもよくありますが、必ずしも恋愛の甘~い関係だけを意味するものではなく、出会いによって生じる新たな可能性や、障害、困難、そして責任なども予感させるカードです。一人で生きる人生よりも、重いものを背負う覚悟も必要になるでしょう。このカードが出たときは、むしろ気を引き締めていただきたい。

占星学との関連では、黄道十二宮の「双子宮(Gemini)」に対応します。いわゆる双子座です。カストルとポルックスの2人の兄弟を描いた星座で、2人の人物が描かれているという点では「恋人」のカードと共通しています。双子宮の基本的意味は言語やコミュニケーションなので、その点からも「社会性」という解釈が成り立ちます。

心理学的には、一元論的な世界から、二元論へと移行したことになりますね。

一つの内的社会を完成させた愚者は、ここで、その社会の外側にある別の社会、もう一人の自分に出会います。そこから先にあるのは、和解か、それとも対立なのか・・・。

2006年5月1日更新

片桐智のタロット占い

2001年8月開設

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