I 魔術師 (The Magician)

I 魔術師

大アルカナで1の番号を与えられたカードが、この "The Magician" です。日本語では「魔術師」と呼ばれることが一般的ですが、「奇術師(手品師)」、「ペテン師」、「職人」などと呼ばれることもあります。

タロットの番号は、小アルカナも含め、ローマ数字(I,II,III,IV,,,)などで書かれることが多いようです。私の場合は、大アルカナはローマ数字で書き、小アルカナは区別するためにアラビア数字(1,2,3,4,,,)で書くことにしています。

このカードに描かれているのは魔術師です。バラやユリに囲まれた場所に立つ若者。その表情は自信に満ち、目は輝いています。赤いローブを身にまとい、棒のようなものを持った右手を上に上げ、左手は地面を指差して(私にはブッダの「天上天下唯我独尊」に見えてしまうこともあるのですが・・・)います。頭の上には8の字を横にしたような物体が浮かんでいます。レミニスカートという名前のシンボルらしいのですが、無限大のマーク、メビウスの輪の形ですね。腰にはしっぽをくわえた蛇の帯が巻かれています。これは、ウロボロスの蛇です。テーブルが置かれ、その上には、小アルカナの4つのスートの各シンボルである、ワンド、カップ、ソード、ペンタクルが置かれています。テーブルの縁には、黄道十二宮(12星座)の各シンボルが描かれているようです。

魔術師は奇術師やペテン師とは違います。神秘主義者や、哲学者といった方が近いかもしれません。この魔術師には明確な目的があり、高次の存在の力を借りて、理想を実現させようとする強い意志が感じられます。

1番のカードであることから、物事の始まりを意味すると解釈されることも多いようです。実際、このカードの人物も、これから何かを始めようとしているかに見えます。「愚者」がまだ明確な目的もなく、始まりとも終わりともつかない混沌(カオス)とした状態を表しているならば、「魔術師」において初めて方向性が生まれ、混沌としたガス状のイメージが、ある形を持った個体へと収束を始めるといった感じです。

いかにも崇高なイメージのある「魔術師」ですが、それに対して「奇術師」や「ペテン師」となると、もっと俗っぽいイメージに格下げされてしまいます。人をだまして利益を得るようなずるがしこい人物ですね。神秘的な力とは無縁の存在です。そもそも、1番目のカードというのは、カードゲームなどでは最も弱いカードとされるのが普通です。卑しい人物が描かれても不思議ではありません。中には、この魔術師の二面性を表すために、2枚、あるいは3枚の「魔術師」のカードが含まれているデッキもあります。複数のカードに分けなければならないほど複雑な意味合いが込められたカードでもあるのです。少なくとも、「愚者」のようなピュアな心はなくなり、欲望や野心が心を支配し 始めていることは確かでしょう。

占星学的には水星に関連付けられています。水星は英語でMercuryで、ギリシャ神話のヘルメス(Hermes)のことですが、このヘルメスというのは、占星術、魔術、錬金術など、あらゆる神秘主義思想の祖ともいわれる人物で、そのヘルメスと「魔術師」のカードが関連付けられているのは興味深いところですね。また、ヘルメスはギリシャ神話におけるトリックスターでもあり、「奇術師」と呼ばれるのも不思議ではありません。

ウェイト版のタロットデッキを作ったアーサー・E・ウェイト博士の解説書では、「魔術師」とギリシャの太陽神アポロとを同一視するような記述もあります。

タロットをカバラの思想や数秘術などと関連付けて解釈することもありますが、矛盾することも多いようなので、あまり理屈っぽく考えすぎない方がいいような気もします。カードを見て何を感じるか。占いにおいてはそれが何より大切なことだと思います。

カード名 I 魔術師 (The Magician)
秘密の名前 力の賢者 (Magus of Power)
天体 水星(Mercury,Hermes)
占いにおける意味 知性。智恵。学習。工夫。技術。アイディア。世渡り上手。オカルト的能力。神秘的な才能。始まり。自信。魔法、魔術、妖術。イリュージョン。器用。
作成日時: 2005年08月10日(月) 20:36:43


片桐智のタロット占い